不動産の譲渡は多額の資金が動くため、しばしば交換という手法が行われることがあります。
また、最近では、借地権を設定している土地について土地を1/2にし、借地権者と土地所有者で借地と底地を交換し、土地を1/2づつ完全所有とすることもあるようです。
固定資産の交換は現金収入を伴わないために担税力がないので等価又は等価以上の資産と交換した場合には、所得税及び住民税がかからない仕組みになっています。
まずは両資産の時価を把握し、交換の特例を受ける条件が整っているかどうかを確認します。
(1) 両所有者が1年以上有していた固定資産であること
所有期間制限の他に、不動産業者が棚卸資産として有する不動産等には適用がないことを明らかにしています。
(2) 交換のために取得したものでないこと
租税回避目的で交換を行うことを防ぐために交換のために取得したものには適用がありません。
(3) 同一種類の資産であって、取得資産を譲渡資産の譲渡直前の用途と同一の用途に供すること
あくまでも「譲渡前後で状況が変わらないので担税力がない」という人のための特例ですのでこのような条件が付されています。
(4) 譲渡資産の価額と取得資産の価額との差額がこれらのうち大きい価額の20/100を超えない
「等価交換」のための規定であるので、あまりにも価格差の大きい場合には適用されません。
次に計算方法ですが、
(1) 収入金額 : 譲渡資産の価額 - 取得資産の価額 (マイナスの場合には0で課税なし)
(2) 取得費、譲渡費用 : 原則の取得費、譲渡費用 × (1) ÷ 譲渡資産の価額
(3) 所得税及び住民税 : {(1) - (2)} × 短期39%、長期20%
(例)
時価1億円の土地を他人所有の時価9,000万円の土地と交換した。
なお、取得費及び譲渡費用は500万円であり、5年を超えて所有している。
(1) 収入金額 : 1億円 - 9,000万円 = 1,000万円
(2) 取得費、譲渡費用 : 500万円 × 1,000万円 ÷ 1億円 = 50万円
(3) 所得税及び住民税 ( 1,000万円 - 50万円 ) × 20% = 190万円
交換の場合には税額が全く発生しないことがほとんどですが、条件に合わないと特例を受けられません。交換を計画中の方はよくご検討下さい。